それって本当に「神の臨在」?

2013年4月9日火曜日

キリスト教信仰

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 プロテスタントの新興教派に、「ペンテコステ派」というのがある。「聖霊派」とか「カリスマ派」とかも同じような系統だ。それらの派の特徴は、礼拝で歌われる歌によく現れている。
 いわゆるオーソドックスな聖歌・賛美歌ではなく、新しく作られたコンテンポラリーな曲を好んで歌うのだ。ロック調だったりバラード調だったりで、若い人向けと言えるかもしれない。

 初めに断っておくが、礼拝で歌われる歌(賛美という)に、これでなければならないという指定は、聖書にはない(強いて言うなら、神をあがめる歌詞であるという条件があるだろう)。

 前述の新興教派は、いわゆる「体験」を重視する傾向がある。例えば神の奇跡を見るとか、病気が神によって癒されるとか、神の存在を「感じる」とかの体験だ。

 それらの体験は悪いものではなく、かえって良いものであろう。神が今日も実際に働かれるという証明にもなる。

 が、彼らの問題点は、その体験がどれだけあるかで、その人の信仰とか敬虔さとかが測られてしまうところにある。つまり体験が多ければ「霊的」、少なければ「まだこの世的」ということだ。

 だから年配でプライドが高いクリスチャンなどは、後輩に負けられないなどの理由で、ことさらに体験を求めるようになってしまう。
 いわゆる「体験」は神から一方的に与えられるもので、人の努力によるものではないはずだが。

 そんな「体験主義」の新興教派が常日頃から口にする言葉の一つが、「神の臨在を感じる」である。簡単に言うと、神様の存在感をリアルに感じる、ということだ。

 その存在感がもたらすのは「あたたかさ」とか、「心の平安」とか、「喜び」とか、そういったポジティブな感情だ。
 そして「霊的」な人ほどその存在感を強く感じられる、というのが、暗黙の了解的に理解されている見解だろう。
 だから「神の臨在」を感じるということは、彼らにとって重要なステイタスとなる。私はいつも神様を感じています、だからいつもポジティブです、だからとても「霊的」です、というわけだ。

 その「神の臨在」をもっとも感じやすいのが、冒頭に書いた礼拝賛美の部分である。
 賛美を歌う中で、「神の臨在」に包まれる。だから賛美をする前後で、自分自身がまったく変えられている、という。

 それは、まったく理にかなわないことではない。
 聖書には、神は賛美の中に住まわれるという表現があるし、ソロモンの神殿奉献の時などは、神の栄光が強く現れて、祭司たちが立っていられなかったというエピソードもあるからだ。

 が、「神の臨在」をいつも感じるのが霊的なクリスチャンで、そういう人たちはいつもポジティブな感情でいられる、という理想像みたいなものが彼らの心を支配しているとしたら、それは大きな間違いにつながる。
 何故なら、いつも「神の臨在」を感じていなければならない、いつもポジティブに振舞わなければならない、という神経症的心理が、何でもかんでも「神の臨在」と決めつけてしまうことになりかねないからだ。

 彼らは、賛美を繰り返し歌っている中で、気分が高揚してきた、気が晴れてきた、不思議と心が安らかになった、等と言う。それはそれで素晴らしいことだ。が、一般に音楽療法の分野では、歌を歌うことでストレス・ホルモンであるコルチゾールが低下することが証明されている。また歌や楽器の音色で、脳内麻薬が分泌されることも証明されている。この脳内麻薬は気分を高揚させ、不安感を払い、ポジティブな感情を増加させる。

 そのような事実を無視して、賛美したから「神の臨在」に包まれた、と言うのはあまりに安直すぎる
 それが自己完結していればまだいいが、それを教義的な事実として他者にも広めるとしたら、オレオレ詐欺ならぬ神神詐欺みたいなことになってしまう。

 ペンテコステ派の礼拝に出席すると、舞台上の賛美奉仕者たちや、舞台近くの一般信徒たちは、だいたい皆同じように見える。手を挙げたり踊ったり、笑顔だったり涙を流したり、目を閉じて眉間にシワを寄せ、「今、私は神の臨在を強く感じてます」的な表情をしたりだ。
 それは、事実かもしれない。
 が、そこに「霊的」に見られたいという願望があったり、集団心理が働いていたりすることを、完全に否定することはできない

 私の教会はペンテコステだった。私は反省を込めてこれを書いている。
 どうか体験にこだわるだけでなく、正しい聖書理解、正しい信仰生活というものが何なのか、各個人がよくよく注意して吟味してほしいと思う。

 もちろん、私は日本中のペンテコステ教会を見て回った訳ではない(彼らの代表者が集まる大会には何度か参加したことがある)。だから全てのペンテコステがそうだと言うつもりはない。
 というより、そう言わずに済むことを願っている。

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